歯医者でインプラント治療をするときに「骨造成(こつぞうせい)」の必要があるといわれることがあります。主に、骨の厚みや高さが不足しているときに行う再生方法になり、安全にインプラントを使うためのものです。骨造成とはどんなものなのか、行ううえでのメリットをご紹介します。また、どんな症例やどんな口腔内の状態だと骨造成が必要になるのか、詳しく解説します。
骨造成が必要なケースとは
骨造成はインプラント治療で、支えるための十分な骨量が残っていないときに使います。一般的なインプラント治療では骨高が10mm以上、幅6mm以上が理想的だといわれています。人工歯根を骨のなかに埋入するとき、その周囲に2mm以上の余裕が必要になってきます。人口歯根はメーカーによる違いがあるものの、足りないままではインプラント治療ができなくなってしまいます。
そもそもどうして骨量にここまでの違いが出てしまうのでしょうか。歯の根っこの部分が病巣や炎症によって吸収されてしまう(衰えやせ細ってしまう)と、骨量が少なくなります。主に進行した虫歯や歯周病、加齢などの要因で起こります。また、歯を抜歯し骨を再生させるにしても、12か月以上(個人差あり)の時間がかかり治療が進みません。人口骨を入れると、4か月程度で骨がくっつくのもあり、インプラント治療を早く進めることにもつながるのです。
- 骨造成をしないとどうなるの?
骨量の少ないままインプラントの手術をしてしまうと、骨を突き抜けてしまう可能性もありますし、歯茎から露出してしまうなどのトラブルの原因も考えられます。周辺の組織を傷つけ後遺症が起こる可能性も考えられます。なかでも下顎管と上顎洞のインプラント治療はリスクも大きいため、周辺の骨の量を十分な状態にしなくてはいけません。
骨造成のメリット・デメリット
骨造成のメリット・デメリットを見ていきましょう。
- メリット
十分な骨量を確保できるため、リスクを回避し安全を重視した治療ができます。骨造成をしたインプラントは、歯が抜け落ちてしまうこともなく、長期使用を実現してくれます。歯茎のバランスを改善する効果もあるため、見た目の美しさにも影響します。骨造成をしていると安定性が高いのもメリットです。もちろん、インプラントの治療後に適切なメンテナンスができているかどうかによっても変わってきます。歯や歯茎の状態も含め、歯医者にて定期健診を受けるようにしましょう。
- デメリット
骨造成は、すべての人に適している治療法とはいえません。例えば、もともと喫煙の習慣がある人や、全身疾患があると治癒がうまくできなくなってしまい、骨量が増えなくなってしまうことも。インプラント治療ができないケースになりますので、ブリッジや入れ歯などの治療を行うことになります。
また、自然治癒よりも期間こそ短いものの骨の再生までの4か月程度は待たなくてはいけないため、通常のインプラント治療と比べると期間が長くなってしまうデメリットもあります。個人差もありますし、インプラントに必要な治療でもあるので、事前に歯医者さんに相談しスケジュールを組むようにしましょう。
骨造成の具体的な流れ
骨造成は具体的にどのような流れで進んでいくのか、解説します。
- 自分の骨を採取する
自分の骨を使って骨造成をするときは、まずは採取が必要です。オトガイ部や下顎枝より採取します。インプラントも同時に行う場合はボールミンと呼ばれる粉砕器を使って細かく砕きます。
- インプラントの埋入
歯茎を開き顎の骨にインプラントを埋め込みます。骨量が少ないと所定の位置では安定せず、露出した状態になります。そのため、埋め込む前に自家骨や、骨の補填材が必要です。
- 充填する
不足している部分に対して自家骨や骨の補填材を使い、その後、人工膜のメンブレンを使って覆っていきます。歯茎の侵入を防ぎながら骨の再生を促す効果があります。インプラントが定着したあとは、メンブレンを取り外す作業も必要です。
- 歯茎を縫い合わせる
開いたままの歯茎を縫合していきます。個人差こそありますが、半年以上はかかるためしっかりと固定されるまで待ちます。この間は強い衝撃や刺激を与えることのないように、安静な状態を保てるようにしておきましょう。
- 装着する
インプラントが固定されたあとは、人工歯の装着です。周囲の歯の色やバランスなどを考えた人工歯を取り付け、微調整を重ねていきます。違和感がない状態になったら治療が完了です。
あとは、定期的なメンテナンスを忘れずに行うこと、清潔に保っていきましょう。
まとめ
骨造成は骨量の少ない人でも安全にインプラント治療を行うために、欠かせない治療です。歯の安定性や見た目などたくさんのメリットもあります。その分治療期間が長くなってしまい大変な部分もあると思いますが、インプラントで快適な生活を送るためにも大切なことです。骨造成ができる歯医者もあればできない歯医者もありますので、まずは相談してみて様子を見ていきましょう。